Far East Maverick

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ウッド獲得トレード分析

さて、正式にクリスチャン・ウッド獲得のトレードが成立となったので、改めてこのトレードを分析してみます。

個人的にはニコ・ハリソン ジェネラルマネジャーの動きはとてもとても理に適っていて見ていてとても面白いので、その内容を個人的に整理するためにもな分析。

 

トレード内容

 

【マヴス獲得】

  • クリスチャン・ウッド

 

【ロケッツ獲得】

  • ボバン・マリヤノヴィッチ
  • スターリング・ブラウン
  • トレイ・バーク
  • マーキース・クリス
  • ウェンデル・ムーアJr.交渉権

 

どういうトレードだったのか

 

マヴス……昨プレイオフで浮き彫りになった課題から、リムプロテクター兼リバウンダーとなれるビッグマンを補強したい。

 

ロケッツ……2022年ドラフトの1巡目3位指名権を得たことで有望なインサイドプレイヤーを獲得できそうだし(結果、ジャバリ・スミスJr.を指名)、そのルーキーとアルペレン・シェングンに十分な出場時間を与えたいから、構想外になるウッドを動かしたい。さらに、2022-23シーズンを若手たちで戦ってタンクすれば、2023年ドラフトでまた有望なビッグマンであるヴィクトール・ウェンバニャマを取れる可能性もあり、ますますビッグマンが飽和する。

 

――というような両チームの思惑が一致してのトレード。

 

どう合理的だったのか

 

  • 戦力を低下させることなく補強できた……放出5選手はいずれもローテーション外&ルーキー。昨プレイオフを少人数ローテーションで戦い疲弊しきり、ただでさえ「層が薄い」と言われているマヴスにとってはなるべくローテーション選手を一人も出したくなかった。

 

  • ロスタースポットを確保できた……ロスタースポット15枠中14人が契約下というガチガチ状態だったマヴス(バークのプレイヤーオプションを含む)。小手先ではない補強のため、そして来シーズンからは2ウェイ契約が結べないセオ・ピンソンを本契約で引き止めるため、ロスタースポットに空きを作りたかった。それを実質1対4トレードを行うことで空きを3人分も確保(後にジェイデン・ハーディを獲得したので1枠使用)。ピンソン本契約、レジー・ブロックとドリアン・フィニー=スミスの負担を軽減できるウィング補強(ここにハーディを使った?)、経験とリーダーシップがあるヴェテラン歓迎という有意義な使い方が可能に。

 

  • ウッドの契約が案外安い……「結局ウッドを獲るなら、クリスタプス・ポルジンギスを残しておけば良かったのでは」という声があるけれど、KPのサラリーが約45.7億円に対してウッドのサラリーは約19.3億円と半分以下(まあ、KPとその契約をしたのもマヴスなんだけど……)。けれど、少なくとも主要スタッツだけ見ればどっこいどっこい。しかも、そのKPは昨シーズンのトレードでボールハンドラー兼シューター兼スラッシャーのスペンサー・ディンウィディーとビッグシューターのダーヴィス・ベルターンスになっているわけで、トータルで見て明らかに戦術幅とロスターバランスの改善に成功している。

 

  • ウッドの契約は最終年……なので、もしウッドがフィットしなかったとしても1年、どころかトレードデッドラインまでで“お試し期間終了”とすれば良い。再トレードの場合、アセットとしての価値は下がってしまうだろうけれど、上記の通り割と安めな契約ではあるので、サラリーダンプのために引き取ってくれるチームはありそう(ただし、謝礼として付けられる指名権は全然持っていない……)。

 

疑問符への答え

 

  • 他の選手では駄目だったのか?……Twitter上でよく名前が挙がっていた二人、マイルズ・ターナーとルディ・ゴベール。この二人であれば、完全再建モードには入りたくないペイサーズとジャズならトレード対価には確実に主力選手が含まれざるを得なかっただろう。さらに言えば、ターナーはまだしもゴベールは残り契約年数も多くサラリーも高いので“お試し”ではなく完全な“賭け”の覚悟が必要。それに、ゴベールはアウトサイドから攻められないし。ゆえにウッドが絶妙だったと。ちなみに、コート外で事件を起こしてしまったリショーン・ホームズは個人的にそもそも反対でした。

 

  • ディフェンスが上手くないのでは?……ルカ・ドンチッチ(やる気ムラ)、ジェイレン・ブランソン(サイズ不足)、ティム・ハーダウェイJr.(元々の不得手感)、ディンウィディー(手が出てファウル)、ベルターンス(気力はあるがヤバい)と、実は(?)ディフェンス力が高くない選手が多いマヴス。ここにもし噂のあるゴラン・ドラギッチも加わるとなるとさらにその傾向は強いものに。そんな選手たちと一緒にコートに立った時に、センターだけディフェンス力が高くても正直どうにもならない。勿論、ディフェンス力があるに越したことはないけれど、この状況でより大事になってくるのは個人の力よりもチームとしての力。ブルドーザーコンビ+補強したウィングを中心にチームとしてのディフェンス意識を高め、全員がしっかり役割をこなして守る。ジェイソン・キッド ヘッドコーチとショーン・スウィーニー ディフェンシヴコーディネーターがこれをやってくれると信じているし、その計算も立っているんじゃないかとなんとなく思う。ということで、欲していたのはリムプロテクター“役”であって本当にリムプロテクターである必要はなかった、というイメージ。ちゃんと高さがあって、まあまあ機動力があることが求められていたと。

 

  • 26位でビッグマンを指名すれば安いし良かったのでは?……基本的には、ルーキーが即ウッド級の活躍をしてくれる可能性の方が低い(ごめんムーア)。勿論、即戦力で欲しかった足りない部分を全部埋めてくれてというルーキーを指名できることが理想ではあるけれど、それはウッドがフィットするかどうかよりも不透明だし低確率。なので、スタッツが見えているウッドの方が計算しやすい。

 

 

……と、まあ当たり前のことしか書いてないけれど、そこは自分のための整理が主目的ってことでご容赦ください。

いいことばっかり書いたけれど、「性格面に難あり」「ルカのボール占有率を我慢できない」「バスケットボールIQが低い」「思っているよりずっとディフェンスが酷い」などなどの声もある。

けれど、そもそもリスクのないトレードなんて存在しないし、欠点のない選手なんて存在しないわけなので、そこまで気にしていたらトレードなんて一生不可能。

よりも、合理的さがビカビカ光る今回のトレードが面白く、まとめてみたいと思った次第でした。

結局は結果論でしか語れないトレードの成功不成功。

その答え合わせをする意味でも、早くシーズンでのプレイが観たい。